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奈良新聞 2003年3月13日

診療せず入院患者死亡

「内科医師いない」

奈良社会保険病院

 大和郡山市朝日町の奈良社会保険病院(濱弘道院長)に今月3日、腰痛などを訴えて入院した男性(52)が、医師に1度も診察してもらえず、約9時間半後に死亡していたことが12日、分かった。遺族の強い要望で男性の病理解剖、司法解剖とも行われていないが、同病院から通報を受けた郡山署は業務上過失致死の疑いもあるとみて、病院関係者から事情を聴くなどし、死亡の経緯や病院側の判断に誤りがなかったかどうか調べている。

 男性の親族の話では、男性は3日午前9時ごろ、腰痛や吐き気などの症状があったため、同病院の整形外科と内科の診察を予約。同11時ごろ、痛みで身動きできる状態ではなくなったため救急車を呼び、同病院に搬送。整形外科医の指示で同11時半ごろ、入院の手続きをした。

 その後、整形外科医の診察はなく、同日午後2時半ごろ、男性は「胸が苦しい」と体の不調を訴え、38.4度の発熱や大量の発汗、血たんの症状が出るようになって、家族が「内科に連絡を取ってほしい」と要請。しかし、病院側は「主治医は整形外科の医師だから、勝手に内科医に連絡することはできない」「整形外科医は手術中で手が離せない」と言い、座薬や点滴を投与する処置を取っただけ。血たんの検査も行われなかったという。

 男性の症状はその後もよくならず、家族が何度も内科の診察を頼んでも、「医師がいない」と、同じやりとりの繰り返し。酸素吸入器の装着や心電図を測る措置が取られたものの、同日午後8時すぎ、男性の意識がなくなった。ようやく医師数人が集まって心臓マッサージを施したが同9時10分、死亡が確認された。死因は急性呼吸不全とされた。

 男性は5年前、腰のヘルニアで同病院に入院したことがあり、当時、糖尿病の疑いも指摘されていた。

 複数の親族は「遺族は刑事事件にすることを望んでいません。しかし、病院が何の処罰も受けず営業を続けて行くことに納得できない。1度も患者を診察せず、見殺しにするぐらいならほかの病院に転送してほしかった」と話している。

 井戸上昌弘・同病院事務局長の話 郡山署にすべての処理を任せているので、コメントは差し控えたい。


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