『私のオーストリア旅行』
第10話 " ここがチロルだ "
"ヨーロッパ橋"という名のヨーロッパ一高い橋(ある場所の高度が高いのか、橋そのものの高さが160mと高いのか忘れましたが、どちらも当てはまりそう)を渡り深い山を抜け、アールベルグ山を越えると、フォアアールベルグ州と別れていよいよチロル州に入ります。チロル州は大きな三つの渓谷(タール)がありそれぞれに、固有の民族衣装や文化があるそうです。
アルプス、牧場、牛、綺麗に花の飾られた山小屋風の建物、教会、役者はそろってしかも快晴。バスの外には「ウォー。」と感嘆の声が何度も聞こえる素晴らしい風景が展開しています。
チロルはオーストリアの中で一番美しく、そのチロルの中で一番美しい「ここぞチロル」という説明のついた風景の前でバスは止まりました。当然の事ながらシャッターを切る音が聞こえます。
山あいの牧場の中に小さな教会がぽつんと立っています。ハイジもヨーゼフも羊のアトリもいなくて、ずーっと美しい風景の中を走ってきた、私の目にはどれが一番でどれが二番なのかよく解りませんでした。チロル州にはアンドレアス・フォーファーという名の『ウイリアム・テル』がいてその銅像の前で、私はお決まりの記念写真を撮り、お土産にアンドレアス・フォーファー・マーチの聴ける絵はがきを買いました。
チロル州の首都であるインスブルックはそびえ立つノルトケッテ(Nordkette:北の鎖)の山並みの山懐に抱かれ、イン川のほとりに花開いた文化の薫り高い美しい町です。イン川に架かる橋と言う意味から生まれたインスブルックは ザルツブルグなどと似た響きですが、Bruck〔ブルック〕は橋、Burg〔ブルグ〕 は砦や城の意味で少し違います。
ハプスブルグ家の夏の離宮を中心にこじんまりとまとまった古い町並みは人の心をホットさせ、"小京都"あるいは"小ウィーン"とでもいえばぴったりの感じですが、二度の冬季オリンピックも開かれており、空港もあり、近代的な側面を持ち、観光客の数もかなり多いようです。
駅前から続く、両側におみやげ物屋と普通の商店が混在する大通りが、超有名な女帝の名前である"マリア・テレジア通り"と変えた所に凱旋門があります。ウィンドウに気を取られて歩いていた私はびっくり。フランスにしかないと思っていた我々は早速記念撮影です。
ロープウエイに乗れば、2,334mのHafelekar山の頂上にアッという間につきます。日本の山の頂上には石の道標のような物がありそうですが、オーストリアの山の頂上にはどの山にも必ず十字架が立っています。万年雪がたくさん残っていて、早速私達は雪合戦をして遊びました。ここは山と町が渾然一体となった田舎のような町のような山のような不思議なところです。
その日のお昼は、Hafelekar山へ登る中腹で、インスブルックの町が見渡せる、見晴らしの素晴らしい山小屋風なレストランで、初めてのご招待昼食会でした。何が出てきたか、詳しく次回にお話ししたいと思います。
【補 足】 "ドイツ大好き"のページでチロルについてもう少し